不倫慰謝料の示談書に関するQ&A

文責:所長 弁護士 菅沼大

最終更新日:2025年04月09日

Q示談書を作成すると良い理由は何ですか?

A

 不倫慰謝料の請求において、示談書を作成するメリットはいくつもあります。

 主なものとして、合意した内容を客観的に示すことができる、合意内容が守られない場合に訴訟を提起する際の証拠にできる、という点が挙げられます。

 法律上、示談は口約束でも成立しますが、後になって示談はしていないという反論ができてしまいます。

 争いを適切に解決するためには、示談内容を書面にしておくことはとても大切なのです。

 訴訟を提起する際にも、口約束でした示談内容を、第三者である裁判所に対して証明することはとても大変です。

 このような事情から、実務においては、必ずといっていいほど示談書を作成します。

 また、示談書を強制執行認諾文言付公正証書で作成することで、慰謝料が支払われない場合には確定判決を得ることなく強制執行をすることができます。

Q示談書を作成する際に注意すべき点は何ですか?

A

 まず、示談の中核となる慰謝料について、金額、支払い方法(手渡し、銀行振り込みなど)、支払期限を明確に記すことが大切です。

 不倫をした配偶者と不倫相手とが連絡を取り合うことを禁じることなど、慰謝料支払い以外の取り決めについても、具体的に記載します。

 ただし、禁止事項の範囲が広すぎる条項や、過大な義務(勤務先を辞職することや、遠方に転居することなど)を課す条項は、公序良俗に反して無効となる可能性があります。

 示談後に、不倫に関する新たな請求が繰り返されることを防ぐため、示談書に記載したこと以外に、お互いに債権債務が存在しないことを確認する清算条項も記載します。

 最後に、示談書が偽造であるという主張がなされることを抑止するため、示談の当事者本人(または代理人弁護士)が自筆で署名し、実印で押印と割印をしたうえで、印鑑証明書を添付しましょう。

Q示談が取り消されることはありますか?

A

 示談は、法律的な表現をすれば、和解です。

 和解において、詐欺・強迫・錯誤による意思表示があった場合、民法においては取り消すことができるとされています。

 不倫慰謝料請求の場面においては、例えば一方的な要求に応じない場合には、不倫の事実を勤務先に伝えることを告知するなどの脅迫がなされることは考えられます。

 脅迫をされてやむを得ず示談書に署名、押印をしたという場合には、示談を取り消し得るといえます。

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