不倫慰謝料を支払う必要がない場合について

文責:所長 弁護士 菅沼大

最終更新日:2025年01月07日

1 不倫慰謝料が発生するケースについて

 不倫慰謝料は、基本的には次の条件を満たす場合に発生します。

 ①不貞行為(不倫相手との間での性的関係)の存在

 ②(不倫相手の場合)故意または過失の存在

 ③平穏な婚姻生活を継続する権利の侵害

 ④不倫慰謝料請求権が時効で消滅していない

 見方を変えますと、これらのうちひとつでも満たしていないものがある場合や、客観的証拠で証明されないものがある場合、不倫慰謝料の支払い義務が発生しないことになります。

 以下、それぞれについて詳しく説明します。

2 不貞行為(不倫相手との間での性的関係)の存在

 まず、一般的に不倫や浮気といわれることであっても、不倫慰謝料請求の場面においては、通常は性的関係がなければ不倫慰謝料は発生しません。

 さらに、訴訟による不倫慰謝料請求において請求が認められるためには、一般的には不貞行為の存在を客観的な証拠によって証明する必要があります。

3 (不倫相手の場合)故意または過失の存在

 不倫慰謝料の請求は、法的には不法行為に基づく損害賠償請求です。

 不法行為は、不貞行為をした人に故意または過失がなければ成立しません。

 不倫相手においては、不貞行為をした配偶者が既婚者であることを知っていたか、注意を払えば知り得たという場合でないと、不倫慰謝料の支払い義務は生じません。

 不倫をした配偶者が独身であると偽っていた場合や、お互いの素性をほとんど知らないという場合、不倫慰謝料を支払う義務が生じないこともあります。

4 平穏な婚姻生活を継続する権利の侵害

 不倫慰謝料は、専門的な表現をすれば、「平穏な夫婦生活を送るという権利や利益」を侵害されたことに対する損害賠償金です。

 見方を変えますと、「平穏な夫婦生活」が存在していない場合、不倫慰謝料は発生しないことになります。

 不倫とは別の理由によって、不貞行為の時点で既に夫婦関係が破綻していたという状況であれば、不倫慰謝料は発生しないということになります。

5 不倫慰謝料請求権が時効で消滅していない

 不倫慰謝料を請求する権利は、不貞行為があったこと、および加害者(不倫をした配偶者と不倫相手)が判明した時点から、3年間で時効により消滅します。

 また、不貞行為があったときから20年が経過すると、不倫慰謝料は時効で消滅します。

 これらの期間が経過し、消滅時効の援用をした場合には、不倫慰謝料の支払い義務はなくなります。

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