クレジットカードの利用明細は不倫の証拠になるか

文責:所長 弁護士 菅沼大

最終更新日:2025年01月07日

1 クレジットカードの利用明細は不倫調査の手掛かりとして有用

 結論から申し上げますと、配偶者のクレジットカードの利用明細は、単体では不倫慰謝料請求の証拠としては不十分であることが多いです。

 不倫慰謝料請求においては、客観的な証拠をもって、不貞行為の存在の証明がなされる必要があります。

 クレジットカードの利用明細だけでは、一般的には、不貞行為の存在を証明し切れないことが多いです。

 また、配偶者のクレジットカードの利用明細を勝手に見る行為は、場合によってはプライバシー権を侵害したり、犯罪になる可能性もあります。

 以下、不貞行為の証明とクレジットカードの利用明細の関係、およびクレジットカードの利用明細を見る行為について説明します。

2 不貞行為の裏付けとなる情報

 不倫慰謝料の請求においては、客観的な証拠による、不貞行為の存在(基本的には、配偶者と不倫相手との間における性的関係)の証明が必要となります。

 あくまでもクレジットカードの利用明細から得られる情報は、いつ何に対していくら使用したかということです。

 必ずしも不貞行為の存在を強く裏付ける情報とは限りません。

 もっとも、多額の食事や買い物、旅行、ホテルの利用などの履歴がある場合には、これらの情報を元にさらに詳しい調査ができることになります。

 また、これらの情報を、興信所などに調査を依頼する際に提供することもあります。

3 クレジットカードの利用明細を見る行為について

 配偶者に無断で財布やカバンなどからクレジットカードの利用明細を抜き取り、その内容を確認する行為は、配偶者のプライバシー権の侵害となる可能性があります。

 その結果、逆に損害賠償請求の対象になり得ます。

 配偶者のパソコンやスマートフォンにパスワードがかかっている場合に、パスワードの推測やブルートフォース攻撃によってパスワードを解除すると、犯罪になる可能性もあります。

 ただし、不倫慰謝料請求においては、収集過程に違法性がある証拠でも、基本的には使うことができます。

 収集行為の違法性の程度が強い場合には、使用できない可能性があります。

 例えば、別居中の配偶者の自宅に侵入してクレジットカードの利用明細を奪ったり、暴力や脅迫を用いてクレジットカードの利用明細を見るというものが挙げられます。

 不倫をされた配偶者からの不倫慰謝料の請求と、不倫をした配偶者からの損害賠償請求は、法律上両立するので、別々の法的問題となります。

 このような状況の場合、不倫慰謝料の減額などで対応をすることもあります。

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